素人サブカル批評

草映画ライターとして映画評論。たまに他のサブカル評論。

映画バカ時報 2018.8.22. 「世の中にはいろんな映画がある2:クオリティを下げるプロ意識」

出張中映画館の近くに住んでいることもあり、絨毯爆撃のようにロードショーを観ています。そんなシリーズもの-前回から1ヶ月経ってしまった-の第2~5弾を一気にいきます。

 

2作目は『ミッション:インポッシブル フォールアウト』

トム・クルーズ映画の最新作。

トムさんは基本法律が許す範囲内でスタントマン無しで演技をすることで知られています。「自分を観に来ているお客さんもいるのに替え玉は申し訳ない」といったり 、「スタントマンが自分のために事故に遭うのは可愛そうだ」といったり、プロ意識が高い逸話として有名です。

さて今作・・・というか前作からなのですが、御年56歳のトムさん、またもほぼノンスタントでスパイアクションに挑んでおります。それが最大の問題点。

スパイアクションというのはアクション映画の中で特殊な部類で「スーパーマン性」のようなものが求められます。戦争映画だと人間の限界を意識した上でのアクションというのがリアリティにつながるわけですが、スパイものはリアリティを追求すると『裏切りのサーカス』のような淡々としたドイツ映画チックなものができあがってしまいます。だからこそ『裏切りのサーカス』はいいわけですが、「インポッシブル」といっているのに、リアルにしたら、もうわけわかんないわけで、当然シリーズの主人公は超人になります。

今作でも超人ぶりは発揮されていて、ビルの上を飛び回ったり、岩を登ったり、バイクで対向車の間を猛スピードで走ったりと人間の限界は主人公にはありません。爆発炎上間近のヘリを20分にわたってノー故障のヘリと同じ速度で飛ばし続けることにいたっては、もはや人間どうのというよりは物理法則を超えている感すらあります。

けれども、いくら主人公は人間を超越しているといっても、トムさんは人間なわけで若いアクション俳優とどつきあいをすると、どうしてもスローモーションになってしまいます。この映画シリーズはトムさんの製作プロダクションが権利をもっているので、誰もトムさんには逆らえません。殺陣のシーンなんて観ていたら、段取りの確認にしか見えないんですが・・・。

まあ、トムさんの肉体的な老化が悲しみと共に漂う以外はいい映画だと思います。ここでいういい映画というのは作品の完成度云々ではなくて、「期待しているモノがスクリーンにあるか」ということです。トムさんがいくらスロモーになってしまっていても、トムさんが元気であることが確認できる。それがこの映画の価値なのです。