素人サブカル批評

草映画ライターとして映画評論。たまに他のサブカル評論。

映画バカ時報 2018.1.6.

さてさて皆さん、あけましておめでとうございます。

年改まりまして、今年もバカ映画時報続けていきたいと思いますが、

当初は山口という映画好きにとっては網走番外地のような場所にぶち込まれた僕が東京では観なかったような映画を観て批評するという趣旨で始まりました。

 

が!!!

広島に異動になったことにより、そんなバカっぽくない映画を観ることができるようになってしまい、最近歯切れが悪いのは自覚しております。

そこで、「映画バカ(僕は映画ならなんでも観ます)時報」と新年改めまして題を変え、「第X弾」というのもナンバリングするのが面倒(覚えてらんねえ)なのでやめ!

ということで、「映画バカ時報」としてスタートします。今年も皆様のご愛顧よろしくお願いします。

※アクセス数的に結構な数の方に読んでいただいてると思うんですが、支えになりますんで(どんな人が読んでるのか気になるので)、リンクでご紹介しているfacebookの友人の皆さんはタイムラインの方にいいね!していただけますと幸いです。面白くねえなぁと思ったら結構です。

 

さてさて、蛇足はここまで

2018年新年3連作観賞の映画評行ってみよう!古典1作と新作2作でございます。

 

戦争のはらわたサム・ペキンパー/1977

新年1発目はこの映画と決めておりました。

広島の矜持あるミニシアター「横川シネマ」で上映されていると聞きまして、絶対この映画を観ると決めていました。

なぜならば『戦争のはらわた』は、マイ生涯ベストテン(1位決められない)に必ず入る映画。監督のサム・ペキンパーはリスペクトする数少ない映画監督の1人でもあります。

そんな私の映画ランキングの最高峰に君臨する映画です。

みなさん絶対見てください。

サムペキ師匠は「バイオレンス映画の巨匠」なんて言われることで結構忌避されがちなんですが、サムペキ師匠の「バイオレンス」というのはある種の美学に基づいて設計されていて、単なる暴力映画というよりは「暴力シーンをいかに本物っぽく、そしてそれと同時に美しく・楽しく見せるか」というところに狂気のような熱意を注いでおります。

サムペキ師匠がこの作品で扱った題材は「戦争」。人類の中で最大・最凶のバイオレンスです。戦争というのは映画好きにとっては最大のエンタメ題材でもあります。

されこの「戦争のはらわた」、舞台になるのはWW2のドイツ東方戦線。ロシア攻めをしている最中のドイツ軍の中になります。この頃のドイツ軍というと、

①黒づくめ②ユダヤ人を殺す③べらぼうに強い悪い奴ら

というイメージがつきものですが、この映画①黒づくめの人はあまり出てこない(最前線ですんで)②ユダヤ人は微塵も出てこない③基本負けてる(何しろロシアは世界史上負けたことはない−極東の新興野蛮人を相手に自爆したことはある−)ということでドイツ軍は題材ですが、いわゆる「ナチスもの」というくくりの映画ではありません。

戦争のはらわた」というタイトルが示す通り、戦争というバイオレンスの臓物をむき出しにするということがこの映画のテーマです。

物語はある戦地に放り込まれた2人の男。シュタイナーとシュトランスキー。

シュタイナーは歴戦のドイツ兵で「自由主義的」。

シュトランスキーはプロシア貴族の血族で名誉欲の強いナチ将校。

この2人を中心に戦争が描かれます。シュタイナーは途中この時代にそれ言ったら即銃殺なのではないかという言葉をいくつか吐く(主義によると思いますが僕は素晴らしいことを言っていると思います)のですが、これがうわべだけの戦後思想の押し付けに見ねえないのは、戦場のリアルが描かれているからこそ。

一方シュトランスキー含め、多くのナチ将校が本当にイライラするほどの小物なんですが、人間ってこんなもんだよな、って思わせてくれます。僕も日本がナチ国家化したら、シュタイナーになれるか自信ないです。

全く合わないこの2人の確執、そして、シュトランスキーの名誉欲のために死んでいく人たちの哀しみ、それを救うことはできないシュタイナーの募る虚しさというのを描くようにこの映画は進んでいきます。

そして、有名なクライマックス。シュタイナーは死んでいった仲間、募った虚しさを胸にシュトランスキーに借りを返しにいきます。見て欲しいので、詳細は言いません。

ただ、こんな強烈なエンディングシーンを僕は他に知らないし、このエンディングがあるからこそ、生涯ベストにこの映画を入れているのです。

最後締めは映画の締めで終わりたいと思います。

「諸君、あの男の敗北を喜ぶな。世界は立ち上がり奴を阻止した。だが奴を生んだメス犬がまた発情している」ベルトルト・ブレヒト(ドイツ人・劇作家)

 

キングスマン ゴールデンサークル』 マシュー・ボーン/2018

さあさあ、所変わって、広島市シネコンで今年のロードショー初めです。

観たのは『キングスマン』の続編。

前作では、アメリカのマッチョ系スパイ映画に中指を立てるイギリス人的な〜それでいて007的ではない〜スパイ映画を確立させようという挑戦が光り、スタイリッシュでありながら、どことなく「やべえこいつらアメリカ人より頭おかしい」というイギリス人の地力を見せつけるエンディングで認められたわけです。

ところが今回。

「あれ、これイギリス製ミッションインポッシブルじゃね?」という絶対にあってはならない感想が鑑賞後に出てくるほど、アメリカ的。国際麻薬組織が仕掛ける全世界に向けた壮大かつショー的なテロを救うという筋書きがまずアメリカ的。前回は「すげえ鍛えた紳士が頑張るとこんだけすげえことできるんだよ」というアクションシーンに出来上がっていて面白かったのだが、今回はマーベル・DCコミックスもびっくりのスーパースパイがたくさん出てきます。途中アメリカの組織と共闘するのですが、イギリス→アメリカのジョークはアメリカ製ウイスキーを「馬の小便」と呼ぶくらいのおとなしいもの。

何が起きたんだ。20世紀フォックスのせいなのか。配給は確実にしているけど、金も出したのか。キングスマンのいいところを全部無くして、ミッションインポッシブルの悪いところを付け足したらこんな映画になりました、という感じです。

前作は面白いのでぜひご覧ください。

 

スターウォーズ 最後のジェダイライアン・ジョンソン/2017

キングスマンの衝撃冷めやらぬ中、はしごで観てきたのが、スターウォーズ新三部作の第2話。全体でみると8作目のこの作品。

このスターウォーズ、海外の批評サイトとか見ても賛否両論でなかなか参考にならなかったので自分で地雷を踏むつもりで観に行ったんですよ。ハートロッカーですね。なんか煙い映画はとりあえず見てみるに限りますよ。この映画を因数分解すると…

・前作に引き続き1〜6の同窓会

ルークかっこいい。ただ、お前そんなキャラだったっけ。ファンサービスで往年の名キャラクターを出すのはいいけど、いろいろ出しては殺しすぎだよ。もう次作、それなしで乗り切るのきついって。

・カイロ・レンはそろそろ落ち着いてダークサイドをやろう。

悪者っぷりがだめだ。親玉も含めて、チープな戦隊ものの悪役の方が悪役っぷりがいい。あと、カイロ・レンの葛藤とかいろいろ演出を観ていると、SF版ロード・オブ・ザ・リングを観ている気分になる。

・ディズニー的多様性が鼻につく

黒人もお世辞にも綺麗とは言えないアジア人も出して、全体としては多様性を標榜するが、主役を綺麗とは言えないアジア人女性にするとビジネスが失敗するのでそこは綺麗な白人の若い女性にしているというなんとも言えない偽善性

・主演女優が少しふくよかに

ディジー・リドリーちゃん。我々と同い年だし、他の映画にも頑張って挑戦しているからぜひ応援したい女優ではある。(ちなみに演技力はちょっとすごいお遊戯会くらい)この映画では若干ふくよかに。というか太りやすい痩せやすい体質なのか、シーンの撮影時期によって体型が変わるわ変わるわ。この間に何があったんすか?ってなっちゃうレベルなので、できたら最新技術で目立たないようにしてあげて欲しかった。

・市井の人々重視なのはわかるが…

説教くさい。もったいぶっては名もなき人々を強調するけども、1〜6であんだけ名もなき人々を木っ端微塵にしてきたシリーズが「歴史を作ったのは名もなき人々なんだ!」と言っても説得力がないし、この作品中でも「台本上名前の付いた名もなき人々」以外は木っ端微塵にされるし。名もなき人々を重視するのは結構なんだけど、もっとうまく演出しないと、観ててうざったい。

ベニチオ・デル・トロが現れる

突然登場。最初俺似てるなあとしか思ってなかったよ。でもね、俺個人としは「ベニチオ兄さんが出ていればその映画はいい映画」というずるい基準があってだな。

 

というわけで、総体あんまり好きではなかったですが、ベニチオ兄さんに免じて許してやろう、という感じでございます。

1〜8まで観続けてきて今更なんだけど、俺スターウォーズシリーズ嫌いだわ…ジョージ・ルーカスのコンプレックスの系譜としてみれていた自主映画時代(1〜6は実は自主映画です)は面白かったのだけど、ルーカスの手を離れたら、そんな面白くねえわ。

ただ、マーク・ハミルルーク・スカイウォーカー役)が「この映画は金ヅルで作れば確実に儲かるから、作られ続けるんだよ」と言っているように、おそらくこれからも作られるのでしょう。サーガっていうのは得てしてこういうもので、にわかも映画好きも狂信者も観続けるからこそ、サーガ化するんでしょうね。とりあえず、この7、8を観て、新しい神話・宗教というのはこうやって生まれるんだろうなあという感慨に新年早々浸ったわけです。

 

 

今年の映画評初めはこんなもんでいかがでしょうか。

もっと面白く書きたいとは思っているんですが、最近文が走りにくいのでこの辺で。

それでは2018年、良いお年になりますように。